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弓道上達のための技術

弓返りしない原因と改善方法、弓返り習得のコツ

更新日:

kyudohanare

最近同じ時期に弓道始めた人が弓返りし始めた。

でも自分は弓返りしない。
 

原因はなんだろう?
 

弓返りは弓道の中級者以上向けの技術。

でもできるとめっちゃかっこいいので早くできるようになりたい初心者も多いだろう。
 

そこで今回は弓返りしない原因とその改善方法、弓返りのコツを解説する。

弓返りの原理

弓返りしない原因を知りたい場合、まずそもそもなぜ弓返りするのかを知るのが一番早い。

そこでまず弓返りの原理を紹介する。

1. 弓の構造

弓返りの原理はまず弓の構造による。

弓に弦を張った状態で弦を弓の中央ではなくやや右寄りになっている。

これを入木と呼ぶらしいが呼び方はどうでもいい。
 

とにかくもともと弓は弦が弓の右側を通るように意図して作られている。

そして会で弦をマックスまで引き絞って矢を発射するとき、弦は弓に向かって復元する。
 

このとき引き絞った弦のエネルギーが弓を回転させる原動力となり、弓返りが起きる。

2. 矢の通り道

弓道では矢は弓の右側につがえる。

だから矢は弓の右側を通る。

弦は矢とくっついてるから弦もつられて右側を通る。
 

そして矢を発射した後の弦はそのままの勢いで推進するから自然と弓返りする軌道を取る。
 

つまりここまで説明した弓と矢のしくみから考えても弓返りは自然とすることになる。

3. 角見の働き

弓手の手の内の親指の付け根の部分を角見と呼ぶ。

左手の天文筋を弓の左外竹の角に当てた正しい手の内を使って弓を引くと、親指の付け根の部分が弓の右外竹に当たる。
 

「引き分け→会→離れ」の過程でこの親指の付け根=角見で弓を押すことにより、弓のやや右側に力がかかる。
 

これを角見の働きと呼ぶ。

正しい手の内によって角見が働くことにより、弓のやや右側に力が加わり、弓が自然と回転しようとする力を助長することとなり、弓返りする。

一番やさしい弓道の手の内のコツ。動画解説付き!

4. 妻手のひねり

妻手は引き分けから会にかけて内側に折るように少しひねられる。

ゆがけで矢を取りかけた状態でこのように妻手をひねると、弦の上側が左に、下側が右にひねられる。

この状態で離すとひねられた弦が復元する力が働く。
 

通常、弓の弦は上から三分の二のところを取りかけて引く。

つまり上の方が長く、下の方が短い。
 

そのため、上を左に、下を右にひねって離すと、弦は左方向に復元する力よりも右方向に復元する力の方が強く働き、全体として右方向に復元する。

妻手を適切にひねることで弦がひねられ、離れでそのひねりがほどかれることにより、弦は弓の右側に向かおうとするため、弓返りする、というわけだ。
 

以上のことから、弓返りは自然とするものだということがわかるだろう。

ではなぜ弓返りしないのか?

弓返りの原理がわかっていれば答えは自ずと見えてくる。

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弓返りしない原因と改善方法

ではいよいよこの記事の主題である、弓返りしない原因の解明とその改善方法を紹介する。

1. 弓を握っている

弓道初心者に一番多い原因はこれで、初心者が弓返りしない理由のほぼ100%は、弓を握ってしまっているからだ。

弓を握る力が強ければ強いほど弓が自然と返ろうとする動きを止めてしまうため、弓返りしない。
 

しかしこれはなんら悪いことではない。

なぜなら初心者にいきなり弓を握らずに軽く握る程度にして弓を引かせたら危ないからだ。

弓を引いてる途中で落とすなど、大変なことになる可能性がある。
 

だから初心者のうちは弓を握っていてもかまわない。

的前に立ってから半年~1,2年経った頃が弓を軽く握ることを覚えて弓返りし始めてもいい時期だと思う。

実際昇段審査でも弐段までは弓返り不問としている。
 

しかし弓道歴1年以上の中級者でいまだに弓を強く握りすぎていて弓返りしない場合は直した方がいい。

じゃあ弓を握らない手の内はどんな手の内かというと、卵中の手の内といって、卵を握る程度に軽く握る。
 

また親指と中指で輪っかを作り、中指と小指は添える程度にすると、自然と卵中の手の内を作りやすいと思う。

卵中の手の内についてはこちらの記事でも詳しく解説しているので見てほしい。

一番やさしい手の内のコツ

2. 手の内による角見が効いてない

弓返りしない原因として2番目に大きいのは手の内による角見が効いてない場合。

角見で弓の右外竹をきちんと押せていなければ弓返りする力が働きにくい。
 

手の内の角見が効いてるかどうかを確認する&練習する方法は簡単で、かけをつけずに弓を正しい手の内を作って持ち、素手で15~30cm程度引いて離し、弓返りするか見ればいい。

こんな引き方でも手の内が正しければ弓返りする。
 

これで弓返りしない場合、100%手の内が悪いことがわかる。

握りすぎか角見が効いてないかのどちらかだ。
 

角見が効いてない場合はに確認すべきことは?

角見が効いていない場合は

  • 天文筋がきちんと弓の左外竹についているか
  • 親指の付け根から親指先までがまっすぐになっているか
  • 親指の爪が上を向いているか

など

を確認するといい。
 

角見について詳しくは一番やさしい手の内のコツで解説しているので見てほしい。

3. 弓手で弓を押せてない

手の内がきちんとできていても弓返りしない場合がある。

それは弓手で弓を押せてない場合だ。
 

弓手を押せてないと手の内の効力が無駄になってしまい、角見が効かない。
 

初心者は弓は引くものだと思いがちだが、弓は引きよりも押しが大事。

引き分けという言葉からもわかるように、弓を引いて分ける、つまり弓を引いて弓の中に体を分けいるようにする。
 

その上で初心者のうちは引きが強く、押しが弱くなりがちなので押しを意識するといい。
 

そして会→離れで弓手を的方向に向かって押しきる。

特に親指を的に突っ込むという意識で押しきるといい。
 

弓手で弓をしっかり押すことにより、手の内の角見がちゃんと効き、弓返りしやすくなる。

4. 妻手のひねりが弱い、または強すぎる

弓返りの原理のところで説明したように、意外と弓返りに重要なのが妻手のひねり。
 

妻手がまったくひねれてないと弓返りしにくい。

ただしひねりすぎれば離れで緩んでしまい、逆にひねりが効かなくなる。
 

コツは大三で妻手の甲を天井に向けること。

そこから手の甲の向きを天井に向けたまま引き分けで肘から先にほとんど力を入れずに下ろしてくる。

それだけで自然とちょうどいい塩梅のひねりが効く。
 

手の甲を上に向けて肘から先を糸で引っ張られれば自然とひねられるため、それに任せればいいのだ。

それを意図的にひねろうとしたり、肘から先を糸で引っ張ろうとしたりするとひねりすぎになるので注意しよう。

妻手のひねりの入れ方 どこをどのタイミングでどうひねるのか?

5. 離れで緩んでいる

最後に離れでの緩み。

もし離れで弓手が緩むと角見が無効になってしまう。

妻手が緩んでしまうと、妻手のひねりが無効になってしまう。
 

そのため、離れは非常に重要な技術だ。
 

理想的な離れは張りつめた糸がプチんと切れたような離れ。

最悪なのは糸が一瞬たわんでから切れるような離れ。
 

緩み離れはまさに後者の糸が一瞬たわんでから切れる状態。

これでは矢の勢いは死んでしまう。
 

この緩み離れの原因のほとんどは手先、つまり前腕、もしくは拳に力が入っていること。
 

妻手に関しては肘から先の力はほとんど抜き、肘を支点に弓を引き、会でも肘から先を伸ばし続けるつもりで伸び合いをする。

弓手に関しては前腕から拳の力を完全に抜いてはダメ。
 

でもそれよりもダメなのは肩などの体に近い部分の力よりも肘から先の前腕、つまり手先に近い方の力が強くなること。

肩からしっかり押せていて、手先の力よりも体に近い部分の方が強ければ離れで緩むことはない。
 

胸を開くように離れるという言葉もあるが、体の中心により近い部分の力で離れを出すようにすると緩みにくく、鋭い離れが出やすい。
 

より詳しくはこちらの記事を見てほしい。

緩み離れの7つの原因とパターン別の直し方

 

以上、なかなか弓返りしない人のために弓返りしない原因とその改善方法を解説した。

以降はこれから弓返りを習得したい人のために、弓返りを習得するためのコツをお伝えする。

弓返り習得のコツは?

私が思う弓返り習得のコツはただひとつ。
 

軽い素引きで練習

弓返りを覚えるのにもっとも簡単な方法は、手の内のところで説明したように、素手で弓を15~30cm程度引いて離し、弓返りできるまで練習すること。

 

この動画の人が説明のためにやってるようなことを弓返りの練習目的でやればいい。
 

実際私もこの方法で弓返りを習得した。

理想は手の内を改善するうちに自然と弓返りができるようになるのを待つこと。

でも待ってる時間がなくてより早く弓返りを習得したいならこの方法が有効だ。

1回2秒程度でできるので何度も練習しながら弓返りのコツをつかめばいい。
 

ただし注意点として、絶対に離れの瞬間に意図的に手の内を緩めてはいけない。

動画で説明している人も言ってるが、これは正しい弓返りではなく、弓返しといって弓道の悪癖の一つだ。
 

離れの瞬間に手をパッと開いてしまえば嫌でも弓返りする。

でもこれをやってしまうと手の内が効かず、矢所がばらけやすい。

それになにより見た目が汚い。
 

この練習をやるときは絶対に弓返しにならないよう注意して行うようにしよう。

弓返りは必ずしないといけないか?

これはよく議論されることだが、弓返りは必ずしもしなければいけないものではない、と考える人もいる。

実際、弓返りしなくてもちゃんと的に中る人は中るし、昇段審査でも弐段までなら弓返り不問とされている。
 

なので初心者のうちはしなくても全然問題ない。

そもそも弓道を習い始めた初心者の場合、弓をしっかり握っているからまず間違いなく弓返りはしない。
 

それを無理やり弓返りしようとして弓の握りを緩めると危険だし、悪癖がつく可能性があるのでやめた方がいい。

弓返りは弓道を始めてからある程度(早い人で半年、遅い人で2年)経ってから習得する技術だと思う。
 

ただし、弓道歴1年以上の中級者なら話は別。

弓返りしないことにはいくつかデメリットがあるから、中級者以上に進みたければ習得すべきだ。

弓返りしないことのデメリット

  • 腕を払いやすい
  • 弓を傷める
  • 見た目がかっこ悪い
  • 參段以上が取れない

人によっては弓返りしないことで腕を払いやすくなる。

特に猿腕の人は手首のあたりを払いやすく、これが結構痛い。

猿腕の場合、腕を払うのは猿腕用の引き方をすれば改善する可能性が高いのでこちらの記事を読んで試してみるといい。

猿腕のための弓の引き方

 

また、弓返りしない状態で長年弓を引いていると弓を傷めることになる。

理由は弓返りしない=弓が自然と返ろうとしている力を止めているわけなので、そのたびに弓に負担をかけるからだ。
 

あとは見た目の問題。

弓返りしない人と弓返りする人では圧倒的に後者の方がかっこいい。

美しい射を目指すのであれば弓返りは絶対に習得する必要がある。
 

また実際に昇段審査でも參段以上は弓返り必須となるため、弓返りしなければ段位が上がらない。
 

しかし戦争で弓を使っていたときは素早く連続で弓を引くためにわざと弓返りしないようにしていた。

そういった弓返りしない引き方も存在するので、ここで挙げたデメリットを受け入れられるのであれば無理して弓返りを習得する必要はない。

弓返りについての意識

最後に弓返りを習得しようとするときにもっとも大切な考え方をお伝えする。

まず弓返りするためには正しい手の内が必要と言われている。

しかし必ずしもそうとは言えない。
 

本当に重要なのは正しい手の内によって
 

弓が勝手に弓返りしようとするのを邪魔しないこと
 

だ。
 

なぜなら弓と矢の構造のところで説明したように、弓は自然と弓返りするようにできている。

だから何も邪魔しなければ勝手に弓返りする。

これが弓返りしないのは射手がなんらかの邪魔をして弓返りを止めてしまっているからだ。
 

その最大の原因は手の内の握りすぎで、次に手の内の角見、そして妻手のひねりも原因となる。

まずは自分がどの部分で弓返りを止めてしまっているかを調べ、その原因を取り除けば自然と弓返りする。
 

つまり弓返りは習得しようとして習得するもの、というよりは正しい引き方を覚えれば自然とできてしまうものなのだ。

これが初心者の中に特に意識して練習しなくても弓返りできる人が出てくる理由だ。
 

ここで説明した弓返りの原因と改善方法、弓返り習得のコツは今すぐにでも弓返りできるようになるための方法だ。

だが実際はそんなこと意識せず、基本に忠実に練習していれば弓返りは自然とできるようになる。
 

逆に焦って弓返りを早く習得しようとすると、弓返しという悪い癖がつく原因にもなる。

弓返りの練習をする場合は慎重に行うようにしよう。

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