弓道で初心者に多いのが離れで顔や腕を払うこと。
通常弓を引くと、弦は弓の右側を通る。
そのため、顔や腕には当たらない。
しかしうまく引けてない初心者の場合、弦が弓の右を通らずにまっすぐ戻ってしまうケースがある。
そうすると弦が顔や腕に当たって痛い思いをすることになる。
今回は弓道で弦が顔や腕に当たって悩んでる人に向けて考えられる限りの原因を洗い出し、そのすべての原因別の直し方を解説する。
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弓道で顔や腕を払うのはなぜか?
ではまずそもそもなぜ普通の人は顔や腕を払わないのに、払う人がいるのか。
そもそも普通はなぜ払わないのかというと、弓の構造と射手の技術により、弦が弓の右側を通るからだ。
矢は弓の右側につがえる。
だからただ普通に離すだけでも弦は弓の右を通ろうとする。
そこに射手の技術が組み合わさることにより、この弦が弓の右側を通ろうとする力が助長され、弦は自然と射手の顔を避けて通る。
つまり顔や腕を払う人の場合、ほとんどは射手の技術不足により、弦が弓の右側を通らないことが原因だ。
で、弦が弓の右側を通らないのは角見が効いてないからだ。
角見が効かない原因を直せば直る可能性が高い。
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角見を効かせるためには?
角見を効かせる方法は2つ。
- 手の内を効かせる
- 妻手のひねりを効かせる
まず角見というのは主に手の内の親指の付け根の部分の働きにより、弓のやや右側に働く力のこと。
角見=親指の付け根と覚えてもいい。
親指の付け根で弓をしっかり押せれば角見は効く。
しかし初心者に多いのが弓を強く握りすぎていること。
こうなると弦が弓の右側を通る力を弓を握る力が打ち消してしまい、弦が弓に向かってしまうために腕を払う。
弓は卵中の手の内という言葉があるように、卵を握るように軽く握り、手の中で弓が動けるよう、少し隙間を開けてやる必要がある。
しかしこれが開きすぎると緩みになるので練習を重ねていくうちにちょうどいい案配を覚えていくといい。
特に初心者が弓を強く握りすぎてしまうのはある程度仕方のないこと。
弓を引くことに慣れてきてから少しずつ力の抜き方を覚えていくといい。
もしその過程で腕を払うのが嫌ならアームカバーのようなものをつけ引くのもありだ。
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また、妻手のひねりについてだが、妻手をひねることでも、離れの瞬間弦が弓の右側を通ろうとする力が働く。
たとえば矢をつがえずに弓を20cm程度引いてそのまま離した場合と、取りかけた状態で妻手を内側にひねって離した場合にどう変わるかを想像してみてほしい。(これは実際にやるとかけが傷つく可能性があるのでかけはつけずにやるといい)
弦を持った妻手をひねれば離れのときに復元力が働き、弦が弓の右側を通りそうなのがなんとなく想像できると思う。
だから妻手をひねることでも顔や腕を払うのを改善できる可能性がある。
ただし、妻手のひねりはやりすぎは禁物。
特に手首から先でひねると離れのときに緩んで結局ひねりが効かなくなる。
ひねるのはあくまで引き分けの過程で前腕が軽く内側に曲がるのに任せる程度でいい。
妻手のひねりの入れ方 どこをどのタイミングでどうひねるのか?
弓のもともとの造りからも、弦は弓の右側を通るようになってる。
そこは射手の角見と妻手のひねりが加わることで初めて弓の弦を右に遠そうとする働きが本領を発揮し、弦が弓の右側を通る。
ただし、離れの瞬間弓手、および妻手が緩んでしまうと、角見も妻手のひねりもその効力を失い、顔や腕を払ってしまう原因になる。
特に妻手の緩みは初心者にはよくあることで、弦を強く握ってしまっている場合や、手先で引いてる場合に起こりやすい。
弦は引っ張るというよりは引っ張られるに任せるもの。
基本肘を会の形に近づけていく過程で弦に引かれるのに任せればいい。
手首から先に関しては基本力を一切入れず、ほぼ引かれるのに任せるだけ。
ただかけを垂直に立てるためにほんの少し力を入れる程度だ。
弓手の緩みは弓手の押しの力が離れのときに抜けて緩む場合と手の内が緩む場合の2パターンある。
弓手の押しが緩む場合は、離れ時に顔を払う恐怖心から緩んでしまうことがある。
恐怖心が原因の場合は、いったん弓道から離れてみたり、しばらくゴム弓などで離れの練習をしまくって恐怖心を克服してから練習を再開すればいい。
もしくは弓手の押しが弱い、または弓の力に負けている。
弓は引き分け~会で押し続け、離れで押しきらなければならない。
これが離れで顔や腕を払うようになると、その恐怖から弓を体から離して引こうとしてしまうケースがある。
そうするとまったく弓をが押せないため、角見が効かずに余計に腕を払いやすくなる。
むしろ弓の間に体を割り込ませるくらいにした方が弓手の押しがしっかり入るため、角見が効いて払いにくくなる。
もし頬付け胸弦ができてない場合は、弓を体から離して引いてる可能性があるのでこれを意識してみるといい。
手の内が緩む場合は、離れの衝撃に慣れてない初心者が離れの瞬間に弓を握っている手を無意識にパッと離してしまうケースがある。
この場合は巻き藁で緩まなくなるまで離れを練習しまくるしかない。
また手の内の中でも小指だけ緩むケースもある。
小指が緩むと角見がまったく効かなくなるため、顔や腕を払う原因になりやすい。
小指は引き分けのときから離れまで基本的に形を変えないから、最初から意識して締めておけばいい。
角見以外に顔や腕を払う4つの原因
弓道で弦が顔や腕を払う原因のほとんどは角見が効いてないことだが、それ以外にもいくつかの原因が考えられる。
角見はできてるはずなのに改善しない場合は以下の原因も疑ってみるといい。
- 妻手を後ろに引いている
- 胴造りが斜めになっている
- 猫背になっている
- 猿腕
順に見ていこう。
1. 妻手を後ろに引いている
初心者に一番多いのがこのパターン。
初心者は弓は引くものだと思ってるから妻手で弦を引っ張るように引いてしまう。
すると会のときに引きすぎて妻手が背中側の方までいってしまう。
こうなると弓の中に顔が入る形になるため、離れで弦が顔に当たっても仕方ない。
弓は引くものではなく、押すもの。
このケースの人は、妻手は弦に引かれるに任せるような引き方ができるようになると自然と直るはずだ。
2. 胴造りが斜めになっている
次にありがちなのが胴造りで腰がねじれていること。
左肩がつま先側に、右肩がかかと側にずれるように胴体がねじれていると弦が顔や腕を払いやすくなる。
肩線がずれていないか誰かに後ろから確認してもらうといい。
3. 猫背になっている
猫背になっていると、顔が体から前に突き出るような形になるため、顔を払いやすくなる。
胴造りでは頭につけられた糸で天井からぶら下げられているイメージで行うとまっすぐな姿勢になる。
4. 猿腕
猿腕の人は骨格的に弓手の押しが効かず、角見が効かないため、腕を払いやすい。
猿腕の人には猿腕なりの弓の引き方があり、正しく矯正すればきちんと弓手で弓を押せるようになり、腕を払わなくなる。
猿腕の矯正方法についてはこちらのページを見てほしい。
まとめ
弓道を始めて、弦が顔や腕を払うようになると、痛いし怖いしで弓を引くのが嫌になるかもしれない。
実際それで弓道を辞めてしまう人もいる。
しかし顔や腕を払う原因の多くは初心者特有のもので、練習すれば直るか、修練していくうちに自然と直るものだ。
ここで辞めてしまうのはもったいない。
諦めずに頑張ってほしい。