弓道やってる人に多い悩み、早気。
弓道でもっとも直すのが難しい射癖の一つとされている。
その原因は精神的なものである場合が多い。
なぜ精神的な原因で早気になるのか、克服するにはどうすればいいのかまとめたので参考にしてほしい。
ちなみに早気は技術的な要因がある場合もある。
心当たりのある人はこちらの記事を先に読むといいだろう。
目次(クリックで飛びます。)
精神的な早気の原因
「離しちゃいけない」
頭ではわかってるはずなのに、体が勝手に動いて離してしまう。
これが精神的な早気の特徴だ。
精神的な早気の人は巻藁などでは会を保てるが的前に立つと早気になる、試合になると早気になる、など条件によって早気が発動する人も多い。
なぜこんな状態になってしまうのか?
それは脳が「弓を引いたら離す」という動作を記憶し、引いた瞬間反射的に離すよう指示してしまうからだ。
熱いお湯に触ったら反射的に手を思いっきり引っ込めるだろう。
早気はそれと同じ原理。
弓を引いたら離すよう脳がプログラムされてしまうんだ。
だから会に到達した瞬間にもう無意識に離してしまっている。
ひどい人は口割に到達する前に離してしまうケースもある。
早気は特に弓道を始めたばかりの早い段階で的中率が上がり始めた時になりやすい。
的中の気持ちよさを脳が覚えてそれを求めてしまうからだ。
こうなるといくら頭で意識して「離すな」と命令してもその命令より先に体が動いてしまってどうしようもない。
ちなみに早気でも中る人は中るが的中精度は確実に落ちるから本気で弓道を上達したいなら治さないわけにはいかない。
じゃあどうすればいいのか?
私なりに考えた克服の方法を紹介する。
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精神的な早気を克服する具体的な方法
まず前提としてだが、早気を治す方法に正解はないことを断っておく。
早気が100%確実に治る方法は存在しない。
でなければ早気で何年も、人によっては10年以上も治せずに悩み続ける人がいるはずがないので。
つまり私が教えるの方法も絶対効くとは限らない。
でもその代わりできる限り誰がやっても効果が出る確率が高い方法にしたつもりだから、試す価値はあると思う。
では本題に移ろう。
精神的な早気を治すには、まず脳を書き換える必要がある。
そのためにはいったん弓を引くのをやめるべきだ。
的中を求めて早く離したがる脳を変えるためにまずは的中が関係のない状態で弓を引くことで的中に対する執着から脳の意識を完全にそらす。
以下の手順にしたがってイメージトレーニングを徹底すれば、脳が書き換わり、早気は克服できる可能性が高い。
- 弓を引くのをやめてイメージトレーニングを徹底する
- 矢を持たずに的前で弓を引き、会を保つ練習をする
- 矢を持って的前で弓を引き、会を保つ練習をする
- 3で会を保つことに充分慣れたらいよいよ離してみる
1. 弓を引くのをやめてイメージトレーニングを徹底する
まず練習が始まったら最低30分は何もせず、会が長い人を観察する。
「会は長く保つもの」というイメージを脳に刷り込ませるためだ。
新入部員になったつもりで30分間観察を続けて欲しい。
弓を引きたくなっても我慢だ。
30分経ったら次は巻藁や素引きをする。
先ほど会が長い人を見ていて会を長くするイメージは染み付いているはずだから巻藁や素引きで会を保つのは難しくないだろう。
もっとも、早気で悩んでる人の中には、的前以外では会を長く保てる人もいると思う。
しかしここはできるできないは別として、さっきまで観察していて脳に刷り込まれた、「会を長く保つ」というイメージを体に覚えさせるために全員取り組んで欲しい。
最低でも13秒が目安だ。
また、元々的前以外なら会を保てる人はできる限り最初の30分で脳に焼き付かせた会が長い人のイメージを思い出しながら、自分も的前で弓を引いてるつもりになってこの練習に取り組んで欲しい。
見た目はただ巻藁や素引きで会を長く保つだけの練習に見えるが、実は高度なイメージトレーニングをしている。
そんな感覚で行えば同じ練習でも全然効果は違ってくるはずだ。
2. 矢を持たずに的前で弓を引き、会を保つ練習をする
1を充分に行って会を長く保つイメージができたところで、今度は的前に行く。
そして矢は持たずに弓を素引きし、1でやった練習と同じように会を長く保つ。
このときできるだけ1の最初に行った会が長い人のイメージを思い出しながら行って欲しい。
彼らと同じことをしている感覚で弓を引く。
つまり矢がなくてもまるで矢を引いてるかのように弓を引くのだ。
このイメージを鮮明にするために1のイメージトレーニングは手抜きしちゃダメだ。
2の的前での素引きは1で行ったイメージトレーニングのレベルを一段階上げるために行うものだと思って欲しい。
次の練習に行く前にこの練習は最低1週間程度行うといい。
3. 矢を持って的前で弓を引き、会を保つ練習をする
1と2で会を長く保つイメージが充分できるようになってから次の工程に進む。
次は的前で矢をつがえて引く。ただし、絶対に離さない。
これまでの巻藁や素引きでやったように的前でも会を13秒以上保つ練習をし、会が終わったら離さずに戻す。
ここで離してしまえば今までの努力は水の泡となる。
離したくなる気持ちや体の条件反射は脳から追い出さなければならない。
脳は昔やってた経験はなかなか忘れない。
だからここで油断すると失敗する。
なのでこの練習は「絶対離さない」という強い気持ちを持って気を抜かずに取り組むこと。
また大前提として、3をやる日がきてもその日の前半は1と2の練習を徹底して行うこと。練習の後半にちょこっとだけ3をやるイメージ。
それをしばらく続けていきながら徐々に3の練習時間を増やしていく。そんな感じで一歩一歩着実に早気克服に向かって進んでいく。
もし3の練習中に離してしまった場合は、その日は弓を引くのをやめて1の会が長い人の観察だけをやる。
「やってしまった」と焦ってもう一度引いても逆効果になりやすい。
早く治したいためにもう一度やりたくなる気持ちはわかるが、脳の機能上一度やってしまうと次もやってしまいやすくなる。
だからもし離してしまったら弓を置いてもう引かない、というルールを設けてその日は弓を引かないこと、が結局は早気克服の近道になるのだ。
3の練習は少なくとも1ヶ月は続けた方がいい。
4. 3で会を保つことに充分慣れたらいよいよ離してみる
3の練習を1ヶ月もやればかなり強力に「会を保つこと」が脳にインプットされるはずだ。
ここまでくればもう「弓を引いたら離す」という感覚は脳から排除されるだろう。
そしてその代わりに新しい感覚である「会は長く保つ」というイメージが充分にある。
この状態まできたら、いよいよ離してみよう。
今までは会を13秒以上保ったら離さずに元に戻していた。
それを今度は会を13秒以上持ったあとに離すだけだ。
しかしこちらも3の練習を充分に行った上で、最後の1本だけ離す、という練習をしばらく行うこと。
いきなり何本も離すと脳が引いたら離す、ということを思い出してしまう危険がある。
会を長く保つことが脳に強力にインプットされた状態で1本だけ離せば上手く行く可能性高い。
言い換えれば、成功する確率が限りなく高い状態でしか挑戦しない、ということだ。
この成功体験を何度も味わうことで徐々に脳が「会を保つ」ことに慣れていく。
この感覚を脳に覚えさせるまでの間は1日1本と決め、慣れてきたら1日2本、3本と離す本数を少しずつ、少しずつ増やしていく。
このように細かく段階を踏んで一歩ずつ着実に進んでいくことが脳を変えるコツだ。
1日4本離せるようになればもう早気克服は目の前。
そのまま油断せずに明日は5本、明後日は6本と増やしていけば確実に克服できるだろう。
まとめ
- 精神的な早気の原因は脳が早く離すことを覚えてしまい、条件反射的に体が動いてしまうこと
- だから精神的な早気を治すには脳を変える必要がある
- 脳はすぐには変わらないから「会は長く保つもの」というインプットをし続けて少しずつ、時間をかけて変えていくしかない
この記事が早気を治す人の助けになれば幸いだ。