弓道部での新入生の指導の仕方は部によってさまざまあるかと思う。
でも一流の弓道部ならある程度決まった型で教えているもの。
今回は弓道部で初心者に弓道を教えるときの流れや的前に立つまでの期間の目安を紹介する。
目次(クリックで飛びます。)
弓道初心者に教えるときの順番・流れは?
まずどんな順番で教えるか、流れを紹介する。
- 徒手練習
- ゴム弓
- 素引き
- かけをつけてゴム弓・素引き
- かけをつけて矢を番えての素引き(離さない)
- 巻き藁
- 的前
1.徒手練習
一番最初にやるのは何も持たずに弓を引く徒手練習。
徒手練習をやる目的は弓の引き方の基本である射法八節を覚えさせること。
徒手練習で射法八節を一つ一つ丁寧に教える。
先輩が新入生の前に立って「足踏み!」と言って足踏みの動作をしてマネをさせ、次に「胴造り!」と言って胴造りの動作をしてマネさせ、残身までやるといい。
始めに射法八節の正しい動きを徹底的に仕込むことが重要。
なので最初の1週間はこれを何度もやる。
何も持ってないと初心者にはイメージしにくいので最初は矢だけ持たせた状態で教えるのもあり。
2.ゴム弓
徒手練習で射法八節をある程度覚えたら次はゴム弓。
ゴム弓をやらせる目的は
- 弓を引く筋力をつけさせること
- 弓を引くイメージを覚えさせること
弓道初心者には弓を引くための筋力がないのでゴム弓が最初の筋力トレーニングになる。
徒手練習と同じようにきちんと足踏みや胴造りをしてから引かせる。
初心者は腕の力で引いてしまうので、できるだけ大きく引くように言って体で引くことを意識させるといい。
腕の力ではなく背中や胸の筋肉を使う感覚をイメージさせる。
また手の内と取り掛けは実際に弓や矢を持った時を想定してここできちんと教えておきたい。
離れは初心者だとおそらく自分から離してしまうと思うが、できるだけ自然に離れられるように教える。
3.素引き
ゴム弓の次は素引き。
並行してやってもいい。
素引きをやる目的はゴム弓とかぶるが
- 弓を引く筋力をつけさせること
- 弓を引くイメージを覚えさせること
初心者には道場にある中で一番弱い弓を使わせるが、それでもゴム弓よりも引く力がかなりいるので最初はなかなか引けないと思う。
全然引けない人はいったんゴム弓に戻るのもあり。
あとはゴム弓と同じように大きく引くようにして腕ではなく体で引く感覚を覚えさせる。
また手の内で角見を効かせるコツや取り掛けでの妻手のひねりもしっかり教えてちゃんとできてるか一人一人見る。
弓を引く筋力がつくまではひたすら素引き。
素引きが軽くできるようにならないと的前には立てない。
非常に地味な練習だが必要な練習なので毎日何十回もやらせる。
ただ素引きだけだと飽きるので時々ゴム弓や徒手練習も混ぜるといい。
ここで飽きた人は部活にこなくなるが、ここで辞めるような人は続けてもどうせすぐ辞めると思うので諦めるべし。
4.かけをつけてゴム弓・素引き
弓道部員が入部して1ヶ月くらいのタイミングでかけを買いに行く。(あまり早すぎると辞める人がいるので1か月後くらいがちょうどいいと思う)
で、かけを購入したらかけをつけてゴム弓で引く練習をする。
かけを付けた方がより離れが実践的に練習できる。
ゴムを弦だと思って離す練習をするといい。
素引きも同じようにかけをつけて引かせる。
ただし矢を番えずにかけをつけて素引きするとかけが傷むので完全に引き分けまではいかず、大三からはそのまま下ろすだけにする。
かけをつけた妻手には力を入れず手が弦に引っ張られる感覚をイメージさせる。
5.かけをつけて矢を番えての素引き(離さない)
次に実際に矢も番えてかけを付けて素引きをする練習をする。
この練習の目的は巻き藁の準備のため。
いきなり巻き藁だとビビってしまう人が多いと思うのでワンクッション挟む意味でやった方がいいと思う。
ただ実際に矢を番えた状態で引き分けることは間違って離してしまう危険が伴うので必ず矢は間違って離してしまっても大丈夫な方向に向けて行うこと。
また指導者がきんと見ているときに行うこと。
ここで取り掛けの仕方をきちんと教える。
矢筈がかけの適切な位置に当たるようにして妻手をひねって手の甲を上に向け、弦を親指と中指で挟み、矢を人差し指で当たって支える感覚をつかませる。
これも最初は大三から下ろすだけにして完全には引かせずにやるといい。
で、慣れてきて問題ないと判断したらちゃんと会まで引かせてから戻す練習をする。
ここで会で伸び合って7秒緩まずにしっかり保つ練習もしておくといい。
6.巻き藁
素引きで十分筋力がついて射形も問題なく、矢とかけを使った状態でも怖がらずにきちんと引けていると判断したら巻き藁に進む。
巻き藁はビビッて離したりすると矢が変なところに当たって跳ね返って危険なので十分注意して行う。
巻き藁の目的は
実際に矢を番えて離す練習をすること。
巻き藁で実際に引かせると癖が出てきたりするので上級者がちゃんと見て悪いところを直してあげる。
学校によっては巻き藁を1000本やるまで的前に立たせないとか。
私の学校では特に基準はなかったが、的前に行く前に少なくとも1ヶ月は巻き藁をやるべきだと思う。
7.的前
巻き藁で射形を見て離れまで問題なくできてると判断したらいよいよ的前に進む。
初めての的前は安全のために道場の中央付近で行う。
最初は狙いの付け方を教えるが、手の内ができてないうちは狙った的より一つ前の間とに飛んでしまうこともざらだと思う。
手の内ができてくるまでは一つ後ろの的を狙うように教える学校もあるようだが、できれば初心者のうちから正しい狙いで手の内の角見と妻手のひねりを効かせることを教えてあげた方がいい。
始めのうちは必ず先輩が一射一射見てあげる。
慣れてきたら自主練もさせるが、最初のうちは巻き藁も1日何本と決めて巻き藁と的前を並行して練習させるといい。
また人によって早く中るようになる人、なかなか初的中がでなくて悩む人が出てくる。
最初は的中は重要じゃないからとにかく射形をきれいにすることが大事と教えておくといい。
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弓道初心者に筋トレは必要?
中1や高1の学生は筋力が少ない場合が多いため、走り込みや腕立て・腹筋などの筋トレをさせる学校も多い。
確かに体力があった方が多少有利かもしれないが、筋力がなくても弓は引けるので筋トレは絶対に必要なものではない。
また下手に筋トレすると余計な筋肉がついてしまったり、力で弓を引く癖がついてよくない。
特に正しい引き方さえできていれば弓は非力な女子中学生でも引けるもの。
筋トレよりも正しい引き方を覚えさせることに注力した方がいい。
正しい引き方で練習していれば弓を引くのに必要な筋力は自然につく。
もちろん基礎体力はあった方がいいので特に体力の低い中学生なら筋トレを新入生の練習メニューに入れてもいいと思う。
が、高校生なら基本しなくてもいいと思う。
看取り稽古と矢取りをさせる
新入生の練習方法は非常に地味。
なんのためにこんな地味な練習が必要なのかがわからないと確実に飽きてしまうと思う。
そこで練習時間の何割かは、新入生を道場内に入れて看取り稽古をさせる。
そしてついでに矢取りもやらせるといい。
先輩のきれいな射を見ることはモチベーションにもなるし、イメージをつかめるので上達が早くなると思う。
看取り稽古は特に四ツ矢を使った実践練習をするときにやるといい。
新入生に矢取りや記録をつける仕事をさせつつ、看取り稽古をさせると緊張感がある中で丁寧に真剣に引いてるところ見せることができる。
これを見て「先輩かっこいい」「あんなふうに引きたい」と思ってもらえれば地味な基礎練習も続けられるだろう。
弓道初心者が的前に立つまでの期間は?
で、実際に弓道初心者が徒手練習により射法八節を一から覚えるところからスタートしたとして、的前に立つまでにどれくらいの期間がかかるか。
これは学校によってさまざまだ。
だがどんなに長い学校でも夏休みには的前に立つのが普通だ。
つまり最低でも4月入部で3~4か月後の7~8月
実際はもっと早い学校が多くてたぶん平均は2~3か月後の6~7月だと思う。
私の場合は4月に入部して確か6月半ばくらいには的前に立った記憶があるから2か月半くらいだった。
巻き藁を1000本もやらせるような学校だと3~4か月みっちりかかって夏休み中になんとかいけるくらいになるだろう。
早い方がいいか遅い方がいいかで言えばたぶん巻き藁をしっかりやった方がその後の成長は早いんじゃないかと思う。
的前に立つとどうしても的中を考えてしまって射形が崩れやすくなるので。
だから正しい引き方を体が覚えるまで巻き藁練習してから的前に立つ方が上達のためにはいいと思う。
そういう意味で的前に立つ前に巻き藁を1000本やらせる学校のやり方は理にかなってるかもしれない。
ただ1000本はさすがに飽きるだろうし、1000本引くことが目的になってしまって射法八節通り丁寧に引くことがおろそかにならないように工夫が必要だと思う。
まとめ
弓道部1年生の弓道初心者に教えるときの流れは
- 徒手練習
- ゴム弓
- 素引き
- かけをつけてゴム弓・素引き
- かけをつけて矢を番えての素引き(離さない)
- 巻き藁
- 的前
という順番が一般的。
的前に立つまでの期間は大体3か月くらい。
1年生に弓道を教えるのは大体2年生か3年生の先輩だと思う。
初心者の練習は素引きやゴム弓ばかりで地味なので飽きやすい。
少しでも弓道の楽しさを理解できるよう教え方を工夫するのが先輩の腕の見せ所だと思う。