「矢所が前に集中する」
「的を狙っても的1つ分前に飛ぶ」
「仕方ないのでいつも後ろを狙ってる」
矢所が前に集中するのは弓道初心者なら非常によくあることだ。
むしろ最初から矢がまっすぐ飛び、矢所前に悩まされたことがない人の方が珍しいと思う。
そこで今回はそんな悩む人の多い、矢所前の原因と直し方を解説する。
的中率9割目指したい人へ
初心者なら前矢になるのは仕方ない
まず最初に前提としていっておくと、弓道を始めたばかりの初心者であれば矢所が前になるのは仕方のないことだ。
なぜなら弓の構造上、普通に引けば矢は前に飛ぶようにできてるから。
これがなぜ中級者以上の人が引くとまっすぐ飛ぶかというと、手の内や妻手のひねりにより、弓や弦をひねっているからだ。
つまり、手の内や妻手のひねりができて初めてまっすぐ飛ぶようになるということ。
なので初心者の場合、的前に立ってから3ヶ月くらいは前矢が出続けるかもしれない。
でも手の内などを正しく練習していけば、だんだんとまっすぐ飛ぶようになっていくはずなので安心していい。
学校によっては初心者にははじめの頃は的1個分くらい後ろを狙うように指導しているところもある。
そして手の内ができてきてちゃんとまっすぐ飛ぶようになってから狙いをまっすぐに変える。
それも1つのやり方だと思う。
あなたもはじめはそうしても全然いい。
ただし、その場合でも狙いはいつかまっすぐにするもの、という意識は捨てないようにしよう。
また、人によってはいくら後ろを狙っても前に飛んでしまう人もいるかもしれない。
また以前はまっすぐ飛んでいたのに急に矢所が前に集まるようになることも
そういう場合はこの記事を読んで射を見直すといい。
スポンサーリンク
矢所前の7つの原因と直し方
ではいよいよ矢所が前になる原因と直し方を解説する。
1. 角見が効いてない
弓道初心者が矢所前になる原因の99%はこれだ。
角見というのは手の内の働きにより、弓のやや右側を押す力のこと。
弓道では弓の構造上矢は前に飛ぶはずだ。
だが角見が働くことにより、まっすぐ飛ぶ。
角見は親指付け根の骨の部分から親指付け根にかけての部分をしっかり使って弓を押すことで働く。
ただし、単純に親指付け根で弓を押すだけでいいなら初心者にも簡単にできるはず。
これができないのは初心者が弓を強く握っていることが一番の原因。
手のひら全体で弓をしっかり握ってしまうベタ押しになっていると角見は効かない。
弓は握る、というより親指と中指で作った輪っかの中に弓を入れるイメージの方がいい。
こちらで手の内のコツについて書いてるので初心者は参考にしてほしい。
また、これはよくありがちなことだが、せっかく角見を働かせて弓を引いてきても離れで緩んだり、手先が動いたりすると角見の働きが矢に伝わらず、前矢の原因になることがある。
手の内は離れで締めるものだ。
緩んでないか確認しよう。
2. 物見が浅い
物見が浅いと狙いが前を向いてしまうため、矢所が前になる原因となる。
ちゃんとまっすぐになっているか後ろから誰かに見てもらうといい。
3. 弓手が弓に負けている
弓手が弓に負けると前矢になる。
弓を前よりも強いものに変えたあとに矢所が前になる人はこのパターンが多い。
特に直心などの反動の強い弓に変えたあとは前矢になりやすい。
弓手が弓に負けるのには2パターンあり、手の内が負ける場合と弓手全体が負ける場合がある。
手の内が負けている場合、離れで弓の復元速度に手の内の締まるスピードが追いついてないということだ。
これは意識して練習して慣れるしかない。
弓手全体が負けている場合、弓が強すぎる場合もある。
その場合は弓力を弱くするのも一つの手。
それができない場合は弓力に自分を合わせるしかない。
とにかく弓に負けないよう、腕の下筋、上腕三頭筋をうまく使って引き分けることを意識するといい。
また猿腕という骨格的に腕が曲がっている人の場合、弓手の押しの力が弓にうまく伝わらず、矢所が前になることがある。
猿腕の矯正方法はこちらの記事を読んでほしい。
4. 押しが弱く、引きが強い
角見が働かないケースとともに初心者に多い前矢の原因が押しが弱く、引きが強いこと。
つまり弓手よりも妻手主導で引いてるケースだ。
弓手よりも妻手が強くなってしまうと、角見の働きや弓手の押しの力が打ち消されてしまう。
そのため前矢になる。
初心者なら弓は引いてしまうのは仕方のないことだが、本来弓は引き分けるもの。
引いて、分ける、ものだ。
もっと噛み砕いて説明すると、弓を押し開きくようにして引き、その中に体を分け入らせる。
窓を両手で開けるときのイメージだ。
ただ、
- ほとんどの人が右利きであり右腕の腕力の方が強いこと
- 左手は伸ばしていて、右手は曲げている分、右手の方が力を入れやすいこと
- 弓は引くイメージがあること
などから初心者が意識せずに引けば妻手主導になるのはある程度仕方のないことだ。
だから指導者は初心者に「押せ押せ」と指導する。
実際初心者なら押しを強くすることだけを意識して妻手のことはあまり考えずに引くくらいでちょうどいいと思う。
それで練習して相対的に弓手と妻手が同じくらいの強さ、あるいは弓手がやや強いくらいになれば角見や弓手の押しが効くようになり、矢はまっすぐ飛ぶはずだ。
5. 妻手のひねりが効いてない
妻手のひねりは矢所が前になるときの意外な原因の一つ。
でも考えてみれば当たり前のこと。
まず妻手をひねらないとどうなるかというと、弦がひねられない。
この状態でそのまま矢を放つとどうなるかというと、矢の左側が弓に当たっているため、矢は自然と右、つまり前に飛んでしまう。
じゃあ妻手をひねるとどうなるかというと、弦がひねられる。
するとどうなるかというと、ひねられた弦が復元する力により、矢は弓を避けてまっすぐ飛んでいく。
で、妻手がひねれているかいないかはどう判断すればいいのかというと、会のときの手の甲の向きだ。
手の甲が上を向いていれば正しくひねれている証拠。
手の甲が正面(大前の方)を向いていればひねれてない証拠。
妻手のひねりについてはこちらの記事に詳しく書いてるので参考にしてほしい。
妻手のひねりの入れ方 どこをどのタイミングでどうひねるのか?
6. 肩線が斜めにズレている
次に初心者だけでなく、中級者にも起きがちなことなのが、肩線がずれているケース。
肩線というのは左肩と右肩を結ぶ線のこと。
左肩が前、右肩が後ろ、というように肩線がずれていれば、狙いが前になるので矢は前に飛ぶ。
押しを意識しすぎて弓手主導の引き方をするとこうなりやすい。
おそらく左肩が詰まる感じになっている。
弓道で肩の射癖を直す場合、まずは弓構えからだ。
そして大三でも肩は動かさない。肘から先だけを動かす。
引き分けでは両肩を均等に開くように、イメージとしては両手で窓を開けるような感じで引き分ける。[/ol]
あとは会にきたときに肩線がまっすぐになっているか後ろから見てもらうといい。
7. 緩み離れになっている
最後に矢所前や掃き矢、失速が多くなる原因に、緩み離れがある。
緩み離れというのは離れまでの間にしていた射法八節の動作の意味をすべて無効にしてしまう、恐ろしい射癖だ。
角見の働き、弓手の押し、妻手のひねりなど矢をまっすぐ飛ばすための働きすべてがたとえ会まではできていたとしても、緩み離れによりすべて無効になってしまう。
そのため、緩み離れをすると矢は前や下に飛ぶことが多い。
緩み離れは緩み離れで原因がたくさんあり、ここには書ききれないのでこちらの記事を参照してほしい。
スポンサーリンク
まとめ
以上まとめると矢所前や掃き矢、失速は手の内ができてなかったり、弓手の押しが弱かったりする初心者が陥りやすい。
それを狙いを後ろにすることでごまかすのもありだ。
だが本気で弓道上達を目指すなら手の内や弓手の押しは必須の技術であり、いつかは必ず身につけないといけないもの。
すぐにはできないにせよ、少しずつ練習して身につけていってほしい。