弓道において、緩み離れは早気と同じで直りにくく、弓道3大射癖の一つとされている。
離れで緩んでしまうと、矢はかなり変なところに飛んでしまうと、まったく的中しなくなるため、弓道が楽しくなくなってしまう。
そんな悩める人の多い緩み離れ原因と直し方を解説する。
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緩み離れの原因とそれぞれの改善方法
緩み離れの原因は7つある。
それぞれの原因について詳しく見ていこう。
1. 妻手肘が前に収まっている
緩み離れで一番多い原因は妻手肘が前収まり、つまり妻手の位置が前にずれていること。
この状態だと弓の力を前腕で受けることになるため、物理的に考えて緩み離れにならざるを得ない。
正常な場合、会で妻手肘は矢筋よりやや背中側に収まる。
そして右肩の真上くらいの位置に拳がくるくらい、弓を体に引き付けている。
ちなみになぜまっすぐではなく背中よりなのかというと、矢筋に拳がまっすぐ離れるためには肘の位置はやや後ろでなければ不可能だからだ。
妻手肘が前収まりの人は
- 大きく引くこと
- 大三から引き分けにかけて矢を自分の体に向かって引き付けてくること
を意識して素引きで引き方を矯正するといい。
そして友人などに見てもらうなり自分で確認するなりして、会にきたときに妻手が右肩の真上にくるようになるまで練習すればいい。
2. 弓を矢束分引けてない
引きが小さいと右肩が弓の中にしっかり入らない。
右肩が弓の中に入らないと前腕だけ力で弓を引くことになる。
しかし前腕だけの力で引いてる場合、緩まずに離すことがかなり難しい。
なのでほぼ100%緩んで離れることになる。
緩み離れを克服するためには大きく引くことが必須条件だ。
ただし、これを手先の力でやるのではなく、体で引くこと。
具体的には両肩を左右に伸ばし、胸を開いて肩甲骨を寄せるような引き方が理想だ。
3. 手先で引いている
3つ目の原因として考えられるのは、妻手拳に力が入りすぎていて、手先で引いてしまっていること。
手先で引いてしまうと会→離れで力を入れている妻手の手のひらを開くなり、無理やり離すなり、なんらかの操作をしなければ離れられないため、ほぼ100%緩み離れになってしまう。
手先で引いてる限り緩み離れは絶対に直らない。
逆に言えば、体で弓を引けるようになれば緩み離れは克服できる。
体で弓を引くやり方を具体的にいうと
- 弓構えで円相をしっかり作り、腕の下筋の張りを意識しながら肩を動かさない範囲でできるだけ遠くに掬い上げるようにして打ち起こす。
- 大三で妻手前腕を内側に少し回し、そのまま初動10cmほどを真横に引く。
- そこから手先ではなく、右肩から肘にかけての上腕を使って胸を開くように引く。
つまり腕で引くというよりは、胸背中肩などを使って引く。
引ききって会まできたら、そこからは肘が的裏方向に糸で引っ張られるようなイメージで力を加え続けることで鋭く離れられる。
4. 平付けになっている(下弦が取れてない)
妻手をひねれておらず、取りかけしたまんまの状態で引くことを平付けと呼ぶ。
正常な場合、取りかけたタイミングでは妻手の手の甲は正面を向いている。
しかし大三で若干斜めになり、引き分け→会にかけてだんだん手の甲が上を向いていき、会にきたときには完全に真上に向く。
平付け(下弦が取れてない)になってる人は手の甲が正面を向いたまま会まで引いている。
これではよほど手先に力を入れて弦を弦をつまむようにしなければ引き分けの途中で離れてしまう。
なぜかというと手先の力で引いてる状態なので、離れで妻手を意図的に離さなければ離れられない状態だ。
これを直すためには引き分けで手の甲を上向きにしながら引けばいいが、これを手首だけでやってもダメで肘の張りで行うのが大事。
詳しくは妻手のひねりのやり方の記事を見てほしい。
妻手のひねりの入れ方 どこをどのタイミングでどうひねるのか?
5. 胴造りがゆがんでいる
胴造りがゆがんでいると、会で上体が安定せず、弓の力を体でうまく受けれないため、伸び合いができず、緩み離れ原因となることがある。
特に状態が前に屈む「屈む胴」、上体が反る「反る胴」の人は緩み離れになりやすい。
屈む胴
屈む胴になっていると、状態が前に傾くため、妻手が前収まりにばりやすい。
上体だけで弓を引く形になり、下半身の力で踏ん張れないため、会で伸び合いがしずらく、したがって緩み離れになりやすい。
反る胴
反る胴の場合、上半身が反る形となるが、これだと弓の力を体で充分に受けれない。
すると妻手が強くなりがちで妻手主導で離すことになり、これも緩み離れの原因となる。
正しい胴造りは天井から頭に糸をつけられてぶら下げられている状態をイメージして、天井にまっすぐ伸びることでできる。
胴造りは地味だけど実はめちゃめちゃ重要な技術なので軽視しない方がいい。
6. 弓手が突っ張り棒になっている
初心者の頃はよく指導者に「弓手を押せ押せ」と言われる。
確かに弓手の押しは非常に重要だが、押し方を間違えると悪癖となる。
左肩が詰まっている(前に出ている)、または上がっているのが悪い例。
この状態だと弓の力を弓手が突っ張り棒になって支えているだけになる。
この弓手が突っ張り棒になった状態では、会のときに的方向に伸び合いができない。
そのため妻手だけ伸びて離れるか、妻手を意図的に操作して離れるかしかできず、緩み離れの原因となる。
弓手で正しく押すためには、左肩をしっかり入れることが大事だが、ポイントは肩の入れ方。
肩が上がってしまう、または詰まってしまう人はまず打ち起こしでも大三でも肩が上がらないようにしよう。
なかなか直らない場合は友人に後ろから押さえておいてもらうといい。
特に弓構えで円相の構えから打ち起こしするとき、絶対に肩は上げてはいけない。
肩を上げなくても打ち起こしはできる。
で、大三→引き分けでは両肩をしっかり入れて両肩を左右に広げるようにして、肩甲骨を閉じるように意識して引く。
そうすれば両肩がしっかり入った状態で会にくるため、会での伸び合いがしっかりでき、緩まない離れができる。
7. 会で止まっていて伸び合いがない
会で伸び合いができないと緩んでしまう。
理由は糸で引っ張ってプチっと切ったときをイメージすればわかりやすい。
緩み離れは糸が切れる直前に力を緩めて糸がたわんだところをプチっと切るイメージ。
これでは当然糸はきちんと切れない。
弓道でも同じで、会で左右に伸び合ってピンと張り合った状態で離せばスパッと鋭い離れが出せるが、伸び合いの力がないと緩んでしまう。
会は永遠の引き分けという言葉もあるように、会にきたからといって気を緩めて力を抜いてはいけない。
会にきたら詰め合い伸び合いを正しく行い永遠に的-裏的(的の反対側にある架空の的)方向に力を加え続けなければならない。
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まとめ
ここまで緩み離れの7つの原因とそれぞれの改善方法を述べてきた。
重要なことはただ一つ。
ピンと張った糸が緩まずに切れるには切れる瞬間まで左右に引っ張り続けていなければならないことだ。
つまり緩み離れの原因は会で左右に伸び合えてないことが大半。
そして会で伸び合いができないのにはいろんな原因があるから、その原因を潰して会でしっかり伸び合えるようになれば緩み離れは直る。
つまり緩み離れは弓道3大射癖の一つとはいえ、原因はわかりやすいので、直すのは早気ほど難しくないはずだ。
この記事を参考に自分なりの解決策を見つけてほしい。